国立劇場おきなわ「第11回創作舞踊大賞」の入賞作品について

 

 

 国立劇場おきなわでは、沖縄伝統芸能の振興に資するため、新たな「創作舞踊(琉球舞踊)」を創造・発信することを目的に、平成22年度(2010年)から「創作舞踊大賞」の公募事業を実施しております。今回は、8作品の応募があり書類確認の結果、全ての応募作品が、9月22日(日)の実演審査に進みました。選考の結果、下記作品の入賞を決定しました。

 この賞には大賞・奨励賞・佳作の三賞を用意しており、今回は大賞1作品、奨励賞2作品、佳作1作品を選出しました。総体的に作品の水準は高く、舞踊作家の個性が輝く内容で、いずれも創作舞踊として大きな可能性を秘めた作品でした。入賞を逸した4作品を含めさらに練り上げ練り直しを重ね、作品の完成度を高めていくことを期待いたします。

 当劇場ではこれを契機に、伝統の保存継承を踏まえつつ、さらなる沖縄伝統芸能の発展を目指し、この制度の一層の充実を図っていく所存であります。舞踊界はもとより舞台芸術関係各界のご支援ご協賛をよろしくお願いいたします。

 

 

                          

 

 

 大賞 島尻紀希(しまじり きき) 作品「遊びくぐつ(あしびくぐつ)」

 琉球人が大和で鑑賞した人形芸を、帰国後に国王の前で披露するというユニークな作品。人形遣いと人形という着眼点は、これまでになくユニークであり高く評価できる。また、人形遣いと人形役の振り付けも上質でとても洗練されたものに仕上がっており、大変見応えがあった。全体的に面白く鑑賞できる作品となっている。

 

 

 

 奨励賞 新崎恵子(あらさき けいこ) 作品「音の響むまでぃ ア!躍れ!(うとぅのとよむまでぃ あ!もれ!)」

 「間」の変化を工夫したコミカルな作品。軽快なテンポにのせて伸び伸びとしたリズミカルな所作とキビキビとした勇壮闊達な振り付けが良く、心浮き立つ作品に仕上がっていた。精気あふれる沖縄人の元気良さを表現しているが、踊り手の掛け声が強すぎて地謡の音楽が聞こえづらい部分が目立った。特に、隊列の作り方は面白いが演舞そのものの変化は少なく、後半は単調になっていた。隊列の取捨・整理と振り付けの工夫が必要である。入羽は、踊りながら退場すると余韻が残る作品になるだろう。

 

 

 奨励賞 喜屋武愛香(きゃん あゆか) 作品「マブイ詩(まぶいうた)」

 沖縄戦をテーマに取り組んだ意欲的な作品。当時のことを回想する老女の人生を女性地謡の音曲や、貝をモチーフとした鳴りものなどに工夫を凝らし、難しい課題に果敢に挑んでいる点は高く評価できる。しかし、戦争という重いテーマを扱いながら、演技や踊りに軽さがみられる。また、舞踊作品でありながら中盤には芝居的な演技シーンが入っており、本作をもって舞踊作品としていいかどうかは、観る人によって意見が分かれるところであろう。創作舞踊としてもう少し整理すると、より創作舞踊らしくなるだろう。

 

 

 佳作 大湾三瑠(おおわん みつる) 作品「露こころ(つぃゆくくる)」

 組踊「手水の縁」のヒロイン玉津の心情をテーマにした作品。発想と意図が良く、名曲にのせて上品で優雅な踊りに仕上がっており、愛しい人を想う情感がしっかりと表現されている。音楽も組踊に用いられていない曲を使用している点は高く評価できる。だが、全体的に曲調が同じテンポのため、振り付けも単調で似通ったものとなっていた。出羽・中踊・入羽と整理し、それぞれの曲を活かすような振り付けが欲しい。また、扮装で「琉球人舞楽絵図」を参考にしているが、本作品の設定は室内のため普段の装いを考えた方が良い。特に髪飾りは再考の必要があろう。

 

 

備  考

1.受賞者には、賞状と賞金が贈られます。(大賞40万円、奨励賞20万円、佳作10万円)

2.表彰式は11月2日(土)16時より国立劇場おきなわ小劇場にて行われます。

3.受賞作品は令和7年3月15日(土)国立劇場おきなわ自主公演「創作舞踊の会」で上演されます。

 

(参  考)

・審査選考の観点

企画(発想・意図)、構成・振付、演出(表現・表出法)、演技、音楽

 

「第11回創作舞踊大賞」選考審査委員(五十音順)

大湾清之(音楽家 国指定重要無形文化財「琉球古典音楽」(各個認定)保持者)

嘉数道彦(舞踊家 沖縄県立芸術大学准教授)

玉城千枝(舞踊家 国指定重要無形文化財「琉球舞踊」(総合認定)保持者)

中村一雄(音楽家 国指定重要無形文化財「琉球古典音楽」(各個認定)保持者)

比嘉悦子(民俗音楽研究家)

山田多津子(舞踊家 国指定重要無形文化財「琉球舞踊」(総合認定)保持者)

金城真次(国立劇場おきなわ芸術監督)