国立劇場おきなわでは、沖縄伝統芸能の振興に資するため、新たな「創作舞踊(琉球舞踊)」を創造発信することを目的に、平成22年度(2010年)から「創作舞踊大賞」の公募事業を実施しております。
第5回目となる本年度は、5作品(課題作品部門なし、自由作品部門5)の応募があり書類審査の結果、5作品ともエントリーされ、去る9月22日(月)、舞台での実演審査選考の結果、下記作品の入賞を決定しました。
この賞には大賞・奨励賞・佳作の三賞を用意しており、本年度は大賞1作品、奨励賞1作品、佳作1作品を選出しました。総体的に作品の水準は高く、舞踊作家の個性が輝く内容で、いずれも創作舞踊として大きな可能性を秘めた作品でした。入賞を逸した二作品を含め、さらに練り上げ練り直しを重ね、作品の完成度を高めていくことを期待いたします。
当劇場ではこれを契機に、伝統の保存継承を踏まえつつ、さらなる沖縄伝統芸能の振興と発展を目指し、この制度の一層の充実を図っていく所存であります。舞踊界はもとより舞台芸術関係各界のご支援ご協賛をよろしくお願いいたします。
◆第5回創作舞踊大賞 比嘉いずみ作品
「遊行流れ(ゆぎょうながれ)」
民俗伝承の京太郎芸を素材に民俗性を離れる試みと、その味を生かす工夫が所作と振付によく活かされ、目 を見張るものがあった。三段構成の曲趣と舞踊表情の豊かさが祝福芸の味をよく引き出し、舞台芸としての民俗舞踊に新生面を拓いた。衣裳の斬新さと地謡の箏・笛のあしらいも効果的で、この作品の魅力を高めるに奏効した。
(踊り/比嘉いずみ)
◆第5回創作舞踊大賞奨励賞 玉城靜江作品
「志情の綾糸(しなさきのあやいと)」
糸をかけて巻きとる綛枠の手仕事。その描写が様式的に美しく舞踊化され、また、恋の幻想から醒めて、一瞬われにかえるその身のこなしと所作に巧妙の味が醸し出された。恋を知り初めた村娘の純な心情が素直に表出され、物語性と舞踊性がほどよく調和して、見る者にほのぼのとした感懐をいだかせる佳品となった。
(踊り/玉城靜江・東江裕吉)
◆第5回創作舞踊大賞佳作 真境名あき作品
「十五夜(じゅうぐや)」
十五夜の満月に寄せる思いの深さを抒情的に品よく作品化した。庶民生活の祈りの民俗とその心意を素直に表現しており、そのために用いた大兼久節とケーヒットリ節の選曲と作詞が奏功し、とくに後半入羽の石なぐの音は、この作品の印象的なアクセントとなり、趣向の発見ともなった。歌三線の好演奏も高く評価される。
(踊り/真境名あき)
備 考
1.受賞作品の作者には、賞状と賞金が贈られます。(大賞40万円、奨励賞20万円、佳作10万円)
2.贈呈式は、来る12月20日(土)18時30分、国立劇場おきなわ「創作舞踊」公演とあわせ行います。
3.受賞作品は上記「創作舞踊」公演で上演されます。
(参 考)
・審査選考の観点
企画(発想・意図)、構成・振付、演出(表現・表出法)、演技、音楽
「第5回創作舞踊大賞」選考審査委員(五十音順)
上原徹(沖縄タイムス社取締役文化事業局長)
大城學(琉球大学教授)
勝連繁雄(音楽家 琉球古典音楽野村流保存会会長)
宜保靖(琉球新報社事業局長)
島袋君子(舞踊家 沖縄県立芸術大学教授)
田中英機(くらしき作陽大学客員教授)
玉城秀子(舞踊家 国指定重要無形文化財「琉球舞踊」(総合認定)保持者)
照喜名朝一(音楽家 国指定重要無形文化財「琉球古典音楽」(各個認定)保持者)
比嘉悦子(宜野湾市立博物館館長)