国立劇場おきなわ「第10回創作舞踊大賞」入賞作品について

 

 国立劇場おきなわでは、沖縄伝統芸能の振興に資するため、新たな「創作舞踊(琉球舞踊)」を創造・発信することを目的に、平成22年度(2010年度)から「創作舞踊大賞」を設けて作品の公募を行っております。

 本年度は、4作品の応募があり、書類確認の結果、全ての応募作品が、12月25日(日)の実演審査に進みました。

 「創作舞踊大賞」では、選考審査委員会において、大賞・奨励賞・佳作の三賞を選考することとしており、当日行われた審査の結果、下記作品の入賞を決定しました。本年度は大賞の該当がなく、奨励賞3作品、佳作1作品が選出されました。

 選考委員会の審査においては、4作品ともに独創性のある意欲的な作品に仕上がっており、特に音楽や衣装に関しての評価が高く、創作舞踊として大きな可能性を秘めていると評価されたところです。一方で、作品のテーマを舞台上で表現するに当たって、構成及び振付、歌詞などのさらなる練り直しを重ねることで、作品の完成度を高めていくことを期待するものです。

 当劇場では今後も、沖縄伝統芸能の保存・継承を踏まえつつ、さらなる発展を目指し「創作舞踊大賞」の一層の充実を図っていく所存であります。舞踊界はもとより舞台芸術関係各界の皆様におかれましては、さらなるご支援とご協賛を賜りますようよろしくお願いいたします。

  

  

奨励賞 嘉数 幸雅 (かかず ゆきまさ)  作 「松喬之寿」(しょうきょうのじゅ)

 

 長寿、繁栄を祈願するテーマは明瞭で、振付は古典を重んじた上に創作が重ねられ、二人舞として構成も良く、音曲はすべてオリジナル曲を用いた意欲的な作品である。また、衣装や小道具、扇子の扱いにも工夫を凝らし、新鮮味があった。一方、舞台の線の使い方や所作のメリハリ、終盤に向けた構成などにもうひと工夫があればより優れた作品に昇華できる可能性を秘めている。

  

 

奨励賞 具志 幸大 (ぐし ゆきひろ)  作 「愛し ヲナリ神」(かなし をなりがみ)

 

 沖縄の風習をベースに三章からなるオムニバスで構成され、音楽も受け継がれてきた音曲から創作曲まで多岐にわたり、かつ使用する楽器も出囃子として琉球楽器のみならず和楽器や洋楽器を配置するなど、独自の世界観を作り上げており、創作舞踊の名に相応しい意欲的な作品である。また、テーマが重く、評価の分かれるところではあるが、これまでの琉球舞踊の伝統である祝儀性に対し果敢な挑戦をしているがゆえに斬新な作品となっている。

  

 

奨励賞 高嶺 美和子 (たかみね みわこ)  作 「神御衣 あけ」(かみんしゅ あけ) 

 

 『おもろさうし』から発想し、古典女踊りを基本としつつ、村踊りの身体技法を織り交ぜ、丁寧に作舞されており、選曲及び衣装・小道具も作品の魅力を高めるのに功を奏した。ただ、テーマである復興や平和への祈り、白衣装の神女とその後に出て主要な踊り手となる二人の神女の関係性、笠を交換する場面のより効果的な表現など、構成にひと工夫欲しいところである。

 

 

佳作 真境名 由佳子 (まじきな ゆかこ)  作 「月の舟」(つきのふね)

 

 琉球舞踊の基本的な所作をベースに、月光をイメージした衣装、クバ扇(小道具)の扱い方、オリジナル曲を交えた音楽構成などで創作作品としの工夫が見受けられ優雅で品良くまとまっている。テーマをより明瞭に表現し、歌詞と所作が具体化する方向で練り込んでいくことで、佳品に成長するだろう。

 

 備考

 1.受賞作品の作者には、賞状と賞金が贈られます。(大賞40万円、奨励賞20万円、佳作10万円)

 2.表彰式は、1月25日(水)15時より国立劇場おきなわ 小劇場にて行います。

 3.受賞作品は3月11日(土)国立劇場おきなわ自主公演「創作舞踊の会」で上演いたします。

 4.次回「第11回創作舞踊大賞」の公募については、令和6年度(2024年度)の実施を予定しております。

 

(参考)

 ・審査選考の観点

  企画(発想・意図)、構成・振付、演出(表現・表出法)、演技、音楽

 

「第10回創作舞踊大賞」選考審査委員(五十音順)

 嘉数道彦(琉球舞踊家 沖縄県立芸術大学准教授)

 島袋君子(琉球舞踊家 国指定重要無形文化財「琉球舞踊」(総合認定)保持者)

 玉城節子(琉球舞踊家 国指定重要無形文化財「琉球舞踊」(総合認定)保持者)

 富田めぐみ(舞台演出家、琉球芸能大使館代表)

 中村一雄(音楽家 国指定重要無形文化財「琉球古典音楽」三線(各個認定)保持者)

 波照間永吉(名桜大学大学院国際文化研究科特任教授、沖縄県立芸術大学名誉教授)

 若柳美之介(日本舞踊家 若柳流若美会会主)

 金城真次(国立劇場おきなわ芸術監督)