長野県阿智あち上清内かみせいない

 清内路は、今や数少なくなってしまった「手作り花火」により、「和火わび」の伝統を継承しています。国立劇場おきなわは5基のからくりを復元しましたが、花火は「和火」ではありませんでした。琉球国や江戸時代の花火は、①硝石しょうせき、②硫黄、③炭、④鉄粉で作られていました。配合を変えて色や勢いを変えますが、特に鉄紛は燃焼時間が長く、噴き出し花火に用いると空高く上がった火花が消えることなく地面に落ちて噴水のような長い軌跡を描きます。
 しかし鉄紛は錆びやすいため、朝作ってその日の夜に使わねばならないといいます。沖縄に花火工場がなくて自作できないことと、火薬は飛行機で運べないことから、鉄紛の入った花火を使用することが出来ませんでした。そこで2024年10月に、からくり仕掛けを長野県に送り、上清内路の噴き出し花火を取り付けて燃焼実験を行いました。無風状態だったため、煙で仕掛けが隠れてしまいましたが、花火は『火花方日記』の絵図の通り、ふんわりとした美しい曲線を描いてくれたのです。

「双龍」(2020年、国立劇場おきなわ)
「双龍」(2024年、長野県上清内路)

 

琉球のからくり花火「双龍」(長野県阿智村上清内路)

からくり装置に上清内路の手作りによる「噴き出し花火(和火)」を取り付けて「双龍」を上演しました。当日は無風状態で煙が滞留して仕掛けを見えにくくしたが、火の粉がたっぷりと噴出され、美しい弧を描いて地面まで落ちて行く様子が分かります。

「双龍」(2024年、長野県上清内路)

噴き出し花火の燃焼テスト

火薬の調合を変えて3つの噴き出し花火を作成しました。火花の密度と勢いから、2番(真ん中)の花火を採用しました。

噴き出し花火の燃焼テスト